Q1 修復って何ですか?
資料に直接行われる修復処置は、その資料を現在どのように利用し、その情報の何をどのような形で未来に残していくのかという方針を実行していくための手段の一つであると 捉えることができます。 但し、資料への修復処置は単独で採用されるべき選択ではありません。適切な修復処置が行われるためには、他メディアへの変換、資料の置かれる環境の整備といった選択肢とあわせて、現物に対してどのような処置が求められるのかを 判断することが重要です。 こうした判断のもと、資料の原型を優先すること、化学的に安定した素材を利用し、再処置の際には除去可能な方法をとること、そして修復の全過程を記録するという原則に基づき、処置を行うことが修復であると考えています。
Q2 修復ってどんな方法がありますか?
おもに以下の方法で、処置が行われます。
・調査・記録:処置前の資料の状態、同時に資料その物の材料などを非破壊検査などにより調査、記録する。それをもとに具体的な処置方針をたてる。
・クリーニング:ウエットクリーニング、ドライクリーニング、黴の滅菌、殺菌、虫害の後処理、不適切な元の修補剤や、劣化の原因となるステープルや金属クリップの除去。
・劣化予防:保存容器への収納、エンキャプシュレーションによる外部の劣化要因からの隔離と、脱酸性化処置、金属イオン抗酸化処置などによる腐食や劣化の予防。
・修補:植物繊維や生麩糊による修補、リーフキャスティング、紙力強化など。
・報告書作成:修復作業に用いた材料、処置を今後の保存のために全て記録する。
Q3 修復ってなぜ必要なのですか?
資料は時間と共に劣化していくものです。何を、どのような形で残すかという課題と共に、いかに資料を劣化から守り、保存していくかという対策が講じられてきました。 資料が置かれる環境を整え、外部から受ける劣化要因から隔離するなどの対策と共に、資料自身の材料が原因となる劣化を防ぐ、化学的な処置の研究が進められてきました。 修復処置は、既に劣化が進んでしまった資料の安定化というだけでなく、劣化によって失われてしまうかもしれない情報を、現在の状態で考察し、 予防をするという役割も担っています。 資料保存を考える上で、その資料の特徴をどう伝えるかという判断のもと、劣化に対する一つの対策として修復という選択があると考えています。
(文責 会員企業 (有)紙資料修復工房)