Q1 酸性紙とは?
わが国では、「酸性紙」の明確な定義はありませんが、国立国会図書館が「受け入れ新刊図書のpH調査」においてpH6.5未満の紙を「酸性紙」としています。同調査によれば、出版物の本文用紙の中性紙化率は1980年代に50%以下であったものが、現在では80%を超えています。 (pHは1〜14までの値で示し、7が中性で7より低いものを酸性、高いものをアルカリ性という) 酸性紙化の最大の原因は硫酸アルミニウムです。この薬品は紙のにじみ止め剤(ロジンサイズ剤)の定着剤に使用されてきました。この硫酸アルミニウムが、紙に含まれる水分と反応して硫酸を生成し、紙を内部から崩壊させるのです。また酸性紙は、その保管環境の温度上昇にともなう相対湿度の低下が繰り返されると、紙に含まれる水分が徐々に失われていきます。そして、しなやかさがなくなり最終的にはボロボロに劣化していくことがわかっています。酸性紙は、近代製紙産業が始まった1850年代から現在までつくられてきており、公文書館、図書館などを中心に「酸性紙問題」として大きく取り上げられ、さまざまな研究と対策が実施されています。
Q2 中性紙とは?
「中性紙」の定義も曖昧ですが、pH6.5以上でpH7.5〜10のアルカリ領域の紙も含めて中性紙と呼んでいます。 長期保存にふさわしい中性紙の規格は、欧米先進国で制定されています。たとえば、アメリカでは「図書館・文書館における出版物・文書のための用紙の耐久性に関する国家規格」(ANSI/NISO Z39.48.1992)や「耐久性のある印刷・本文用紙の選択に関する規格」(ASTM D5634・96)などです。これらによれば、原材料パルプにリグニンなどの不純物質を含まないこと、酸性物質を含まないこと、炭酸カルシウムなどのアルカリ性物質2%相当を紙の中に残留させること、などが挙げられています。最近では、酸やアルカリに弱い資料(写真や染織織物など)の保護を目的として、酸もアルカリも含めないノンバッファー紙もつくられており、これも中性紙の部類に入ります。
Q3 再生紙とは?
経済産業省「紙・パルプ統計」によれば、わが国の古紙利用は2010年で1729万トン、古紙利用率は62.5%と世界最高レベルに達しています。 「再生紙」とは古紙をリサイクルして作った紙のことを指します。近年、資源と環境などの問題から再生紙の使用が進められており、特に官公庁を中心に事務用紙の再生紙への転換が進んでいます。 再生紙が幅広く使用されることは望ましいことですが、長期保存用の書籍や文書の用紙としてはバージンパルプからつくられた中性紙を使用するべきです。なぜなら、再生紙は原料古紙にさまざまな紙が混入する可能性があり、原料パルプ品質の一貫性や純粋性を保証できないことや、長期の耐久性についてもほとんど研究されていないこと、などの問題があるからです。
(文責 会員企業 特種紙商事(株))