Q1 大量脱酸とは何ですか?
大量脱酸とは一言で言うと、酸性紙資料に対し一度にかつ大量に脱酸処理(正確には脱酸性化処理)を施すことです。 脱酸処理研究は世界的には1950年代から始められています。当初は1枚ずつの紙を脱酸する方法が採られました。これは現在では少量脱酸と呼ばれ、特に貴重な資料の処理に使われています。これに対し、大量の出版物である書籍や雑誌などの製本された酸性紙資料には大量脱酸処理がそのコスト、期間、手間を考えるとより適していると言えます。
pHが低い大量の紙資料を個別に1冊1冊を脱酸するのは事実上不可能なため、ある程度の蔵書のまとまりで実施する処置です。
Q2 大量脱酸にはどのような方法がありますか?
大量脱酸処理法は液相脱酸性化処理と気相脱酸性化処理に大別されます。処理環境が液体である方式が前者で、これに対し気相処理はガスを用いて処理を行います。これまでに開発された主な液相処理法としてWeiT’o法(米国)、サブレー法(仏国)、バッテル・ヨーロッパ法(独国)、ブックキーパー法(米国)などが挙げられます。気相処理としては、DEZ法(米国)、BPA法(米国)、FMC法(米国)、DAE法(日本)などがあります。
一般的に気相法は液体よりも資料に対する浸透性の優れたガスを用いることにより、液相法より均一な処理効果が期待できます。
Q3 大量脱酸はなぜ必要なのですか?
19世紀中葉以降に作られた洋紙は一般に酸性の硫酸礬土を含むため、pHは酸性領域(pH 7.0以下)を示すので酸性紙と呼ばれます。 酸性紙の劣化は種々の要素が複雑に重なり合って生じますが硫酸礬土の主成分(硫酸アルミニウム)から派生する無水硫酸が、その強力な脱水作用によって紙繊維の間で潤滑剤の役目を果たしている水分を非可逆的に奪い、繊維同士をくっつけて脆くしてしまうことが主な原因と考えられています。酸性紙はそのままでは将来、酸性劣化を引き起こしてしまいボロボロになってやがては読めなくなってしまいます。これを防ぐ効果的な処置が大量脱酸処理です。紙の中にアルカリ物質を入れ、紙中の酸を中和したり、アルカリを残留させることで延命を図ることができます。
(文責 日本ファイリング梶j