Q1 資料保存管理とは何ですか?
資料保存業務というと、これまではモノとしての資料に主として技術的に関わる方策というイメージがありました。具体的には、損傷劣化した資料に製本や補修等の手当てを行い、利用可能にすること。また、資料が劣化しないように予防的な手当てを施すこと---。しかし、こうした技術的な方策は、所蔵機関の蔵書全体に対応する総合的な保存方針があってはじめて、無駄のない、適切なものになります。「保存管理」とは、この総合的な保存方針に基づいた、アーカイブや図書館での資料保存業務を円滑に進めるためのマネジメント・レベルでの対応といえます。
Q2 資料保存管理はどこから始めるのですか?
まず、こういう問いから始めて下さい。何のために自館の資料を保存するか、どのように現在と将来の利用を保証するか、保存の優先順位は何か----すなわち、自館の保存方針とは何か、と。
この問いへの答えは、資料保存機関それぞれで異なるはずです。蔵書構築や利用者サービスの理念はそれぞれ独自ですから、問いは同じでも答えが違うのは当然でしょう。例えば、他館では利用期間は短くその後は廃棄されてしまう資料でも、自館にとってはなるべく長期に保存し利用してもらう資料がある、また、現物が損傷していても、ハードコピーで利用者のニーズには応えられるので、お金のかかる製本や補修は不要---というように。
Q3 次のステップは?
こうして保存方針が明確になったならば、この方針を貫くために、現在そして将来に考えられる問題は何かを、次のようなテーマに即して挙げてください。
保管環境の整備、代替(マイクロ化、デジタル化、ハードコピー等)、製本・補修、災害対策、セキュリティー、職員や利用者への教育、利用・貸出・資料取り扱い等の規準、図書館協力。ちなみに的確な問題の抽出と列挙のためには、資料保存担当者一人が頭を悩ますのではなく、アーカイブや図書館のあらゆる部門(可能ならば建物を管理している外部の企業等も)の衆知を集めるのが肝要です。
そして最後に、問題ごとに、それを解決するためにはどうすれば良いのかを考え、それにかかるお金とマンパワーを予測し、短・中・長期のロードマップにします。これが資料保存計画と呼ばれるもので、計画を円滑に遂行することが「保存管理」ということになります。
(文責 会員企業 且送ソ保存器材)